老人ホームの審査に必要な健康診断書とは

老人ホームに入所、あるいは通所してサービスを受けたいというときには申込書類として健康診断書を用意しなければなりません。利用の際の審査に用いられているのが特徴ですが、どのような目的で使用されているのでしょうか。

一般的に必要とされている記載内容についても確認し、なぜ健康診断書が必要なのかを理解しましょう。

健康診断書は一般的な項目だけではない

老人ホームの利用を申し込むときに提出を求められる健康診断書は大抵はフォーマットが定められていて、医師に相談して記入してもらわなければなりません。その検査内容や記入項目には一般的な健康診断書と同じものもありますが、老人ホームの利用時だからこそ必要になる項目も多くなっています。

一般的に健康に関する情報を提供しなければならないケースでの健康診断書には身長と体重、血圧や脈拍数に加え、血液検査と尿検査の結果や胸部X線のレントゲン検査所見の記述が求められるでしょう。さらに、細かいところまで要求する場合には心電図検査や便検査についても行ってもらい、血液検査の項目もかなり増やさなければなりません。

これに加えて、集団生活を送り始めるときに感染症を持ち込まないようにするという意味で感染性の高い病気については持っていないことを確認する検査を受けることが求められるのが通例です。MRSAや結核などのように集団感染が問題になっているものが主な対象ですが、高齢者の場合にはB型肝炎、C型肝炎の検査も必要とされることが多くなっています。

これと関連して既往症についての告知が求められるのが通例です。老人ホームを利用するときにはこのような一般的な検査を一通り受けて書いてもらうだけでなく、さらに二種類程度の項目の診断を受けなければなりません。

特徴的な日常生活自立度の項目とは

老人ホームの審査で必要になる項目は一括りにすると日常生活自立度と言うことができます。これは寝たきり度、認知症という二つの項目に分類することができ、自立的に活動できる身体的な能力があるかを寝たきり度から、日常生活を送るのに必要な判断力を持っているかを認知症の程度から判断する仕組みになっています。

認知症として診断を受けている場合にはさらに細かな記述が求められる場合が多く、いつから認知症と診断されていたか、どのタイプの認知症か、症状としてどのようなものが出ているかといったことも医師に記述してもらうのが一般的です。

その他にも施設によって細かな項目がある

以上が一般的な健康診断書に記載を求められる内容ですが、施設によってはもっと細かく書いてもらわなければならないこともあります。例えば、既往症だけでなく既往歴として時期や状況まで克明に記述することが求められたり、現在服用している薬について服用量や頻度なども含めて全て書かなければならなかったりするケースは少なくありません。

また、病気を患っている場合にはその病名と治療経過についても書くことが多くなっています。必要な検査項目も老人ホームごとに違っていることが多いため、どの施設を利用するかに応じて受ける検査を選ぶことも必要です。

なお、三ヶ月以内の検査結果でなければならないのが標準的なので、審査を受けると決めたタイミングで受けることになる場合が多いでしょう。

介護保険制度との関連性も知っておこう

日常生活自立度の記載が必要になるのは介護保険制度との関連が深く、審査にも大きな影響を及ぼす部分です。老人ホームは特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、グループホームなどの様々な種類があります。それぞれに対してどの程度の要支援度、要介護度の高齢者の介護を担うかが異なっているので、その範囲内に入っている人かどうかを審査する上で重要な情報になるのです。

また、多くの老人ホームでは利用者が溢れている状況があり、競争になったときには支援する必要性が高い人が優先されることになります。その判断基準としても欠かせないものとなっているため、日常生活自立度の項目が健康診断書に含まれているのです。

これによって、介護保険制度を使えるかどうかといったことも決まることから、施設側として入所や通所をすべきかをアドバイスすることもできるという点でも重要な項目となっています。

健康診断書は審査にだけ使用されるわけではない

健康診断書の内容が施設ごとにかなり異なっているのは、単純に審査の厳密さが違っていることだけが理由ではありません。実は健康診断書に記載されている内容は、実際に入所あるいは通所が決まった後のサービスに活用されるようになっています。

自立度がどの程度高いかに応じて必要になるサービスは異なり、介護を担当する適任者も異なるのは明らかでしょう。また、既往歴から判断してどのような対応をしなければならないか、病気に応じてどんな知識のあるスタッフを揃えなければならないかといったことを考えてくれているのが普通です。

それに加えて、処方薬についての記載がある場合にはその情報に基づいた服薬管理をしてもらうこともできます。このように、サービスの内容に直結するのが健康診断書の特徴です。一方、入所の場合にも通所の場合にも一般的には定期的な健康診断を実施しています。

老人ホームで生活を始めた結果として、心身にどのような変化があったかを調べる上での起点になるデータが健康診断書の内容になります。状況が悪くなっているようであれば本人だけでなく家族とも相談し、より良い生活を送れるようにするにはどうしたら良いかを一緒に考えてくれるでしょう。

サービスの向上による対策も講じてもらえる場合が多く、詳細な内容の健康診断書を提出することにはメリットが多いのです。

虚偽の内容があるとどうなるか

健康診断書は本人や家族ではなく医師によって記載されていなければなりません。

そのため、施設としても記載内容に誤りがないのを前提にして審査をしていますが、虚偽の内容が含まれていることも全くないわけではないでしょう。

例えば、寝たきり度がA2かB1か判断しづらいといった場合に審査を通りやすいようにしようという話で決めてしまうこともないわけではありません。このようなグレーゾーンについては医師の承諾が得られていればあまり問題として取り上げられることはないものの、受け取った書類を本人が書き換えてしまうこともあります。

その場合には、担当した医師に確認を取られることになり、明らかな不正があったとわかったら審査は落とされてしまいます。いくら審査を通りたいと思っても書き換えるような不正行為は行ってはならないのです。